屋久島学ソサエティ第2回大会報告
14日のテーマセッション2
「屋久杉のすべて(自然科学編)」(
西部林道のエクスカーションでも参加者13名は全員島内で、
ポスターセッションの会場も賑わいました。
14日「ヤクタネゴヨウの森づくり植樹祭」
主催:屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊 共催:屋久島学ソサエティ/毎日新聞社
場所:屋久杉自然館 ヤクタネゴヨウ苗の里帰りプロジェクトの一環で10月から募集していた里親さんに苗をお渡しする日でもありました。
ソサエティ参加の皆さんと、屋久島の里親さん、約50名の参加で50本のヤクタネゴヨウの苗を植えました。今は杉林の中の小さな苗ですが、20年後、50年後、100年後には立派なヤクタネゴヨウの森になるよう、大切に育てましょう。
ヤクタネゴヨウについて、そして今回植樹する苗の由来について話す金谷整一((独)森林総合研究所)さん。
植樹後、皆で「ふるさと」を大合唱
12日エクスカーション コース①「ヤクスギランド」
案内人:高嶋敦史(琉球大学与那フィールド)+古賀顕司(フォレック)
ヤクスギランドのエクスカーションには9名(島内6名・島外3名)参加されました。屋久島の林内では至る所で見かける「杉の倒木」。その上に新たな杉が芽生えるまでには倒れてからなんと100年くらいの時間を必要とするそうです。ヤクスギ林の動態を継続調査されてきた高嶋敦史さんの説明に、屋久杉への関心が高い参加者からの質問が相次ぎ、「もっと一緒に歩きたかった」との意見が出るほどの内容の濃い時間となりました。(レポート・写真提供 渡部幸さん)
12日エクスカーション コース②「地学:付加体堆積岩」
案内人:中川正二郎(屋久島地学同好会)+小原比呂志(屋久島野外活動総合センター)
地質エクスカーションは4名の参加で、雨をかいくぐるように海岸の興味深い地学ポイントをめぐってきました。
①春田海岸では津波・海岸段丘と波蝕ベンチ・離水サンゴ礁・石畳の石の見分け方。②早崎鉱山跡では壮絶な海食崖の堆積岩に含まれるタングステン鉱脈と水晶、貫入する早崎花崗岩、採掘坑道。③楠川海岸では砂岩頁岩互層のなかに見られるさまざまな付加体構造と、とにかく盛りだくさん。
熱意と知的好奇心あふれる講師中川正二郎さんのリードで、悪天をものともせずに巡検を続けた参加者のみなさんは、「なにげないものでしかなかった石や岩が、まるで違うものに見えてくる」「地質でこれほどエキサイティングな内容が楽しめるとは」と興奮気味でした。講師・スタッフと合わせて6名という小さなチームで、エコツアーとしてはベストサイズでしたが、ちょっともったいなかった感もありました。(レポート・写真提供:小原比呂志さん)
15日エクスカーション コース③「西部照葉樹林」
案内人:湯本貴和(京都大学霊長類研究所)+真津昭夫(ネイチャーガイドオフィスまなつ)+小原比呂志(屋久島野外活動総合センター)
参加者は総勢13名。やや湿潤な東部の森を愛子岳山麓で、乾燥気味な西部の森を半山で観察。生態学の基本から最先端の森の分析まで幅広い話題が織り込まれ、充実したフィールドワークになりました。
「かつて言われた陰樹と陽樹という概念は今は使わない。ギャップができるのを種の状態で待つか幼樹の状態で待つかの違いだ」
湯本さんの言葉ですが、このように、生態学の現在の水準で森全体を見渡す経験はなかなかできるものではありません。帰り際にはサルの群れに出会い、日本のサル研究の中心的役割を担ったまさにその現場で、鈴木さんから群れの盛衰のドラマについて話を伺えるというすばらしい経験ができました。参加者には若手のガイドが多く、照葉樹林についてきちんと学べる貴重な機会でした。帰りの車内でも話題は尽きず、解散後も有志で湯本さんを囲んで食事会まで行われるなど、大変な熱気でした。(レポート:小原比呂志さん、写真提供:渡部幸さん)